■コラーゲンの作用メカニズム
コラーゲンの効果を認める学者の中では、その作用メカニズムにいくつかの仮説が立てられていました。 その中で一番有力と思われていたのが、「コラーゲンに含まれる特殊なペプチドの効果」です。 カゼインからβ-カゾモルフィンができるように、コラーゲンが消化される過程で、 体内のコラーゲンの合成を促進させる特殊なペプチドが残るのではないかと考えられていたのです。 この説にはコラーゲンの効果を否定する学者も反論していません。
そんな中、2009年1月24日の京都新聞に「コラーゲンやっぱり美肌効果」という記事が掲載されました。 ------------------------------------------------------------------------------- コラーゲン(ゼラチン)の分解物のペプチドが皮膚の傷の修復を助けるメカニズムが、 京都府立大などのグループの研究で分かった。コラーゲンは「肌に良い」と言われながらも そのメカニズムは不明で疑問視する声もあったが、機能の一端が初めて確かめられた。 近く発行される米国化学会の学術誌「食品と農芸化学誌」の二〇〇九年第二号に掲載される。 -------------------------------------------------------------------------------
コラーゲンに含まれるペプチドがコラーゲンを作る細胞(線維芽細胞)を集めてくることが、 京都府立大学などの研究によって確認されたのです。以前より有力視されていた 仮説の一端が証明されたと言えるでしょう。ただ、線維芽細胞にコラーゲンを作らせるかどうかまでは、 まだ解明されていないようです。
●ホメオスタシス
人間にはホメオスタシス(生体恒常性)という機能が備わっていて、ウイルスが進入したり、 怪我を負ったりした場合には、元の状態に戻そうという力が働きます。 でもそれは体が勝手にやっていることなので本人の意思ではどうにもなりません。 ちょっと風邪気味になったとき、学校を休みたくて「もっとひどくなれー」って思っていたのに治ってしまった 経験はありませんか?反対に、肌のコラーゲンがどんどん劣化しているのに全然補ってくれなくて、 「ホメオスタシスは何サボってんのよ!」なんて怒ったりしてね(笑)。 一般に人間は20歳~25歳を過ぎるとコラーゲンの量が減っていきます。 体内で新しく作られるコラーゲンの量が、古くなって分解される量よりも少ないためです。 お肌の状態がどうであろうが生命の維持には関係ないので、ホメオスタシスの対象外ということなのでしょうか。
●線維芽細胞
体内のコラーゲンは古くなってくると分解されてアミノ酸に戻り、一部は体外に廃棄され、残りは体内で再利用されます。 分解されたコラーゲンの分は新たに作って補ってもらいたいのですが、残念ながら普通はそれより少ない量しか作ってもらえません。 日本人の平均的な食生活で必須アミノ酸の不足は考えられません。 コラーゲンの材料は十分あるはずなのにあまり作ってもらえないということは、 体がコラーゲンを作ることを重視していないのかもしれません。
コラーゲンを作る役目をしているのは「線維芽細胞」という名前の細胞です。 この細胞に「コラーゲンを作りなさい」という信号が与えられると、血液中のアミノ酸を集めてコラーゲンを合成するのです。 では、線維芽細胞に「コラーゲンを作りなさい」という信号を与えるものは何でしょうか? コラーゲンを作る必要があるということは、当然、コラーゲンが減少している状況です。 それを判断する材料は体内の古いコラーゲンの分解物とは考えられないでしょうか。 「コラーゲンが分解されたアミノ酸」を線維芽細胞が見つけたとき、コラーゲンの減少が認識されて、 新たにコラーゲンを作ろうとする。これは、非常に有力な仮説であると思われます。
●高分子と低分子
人体を構成する10万種類のタンパク質が分解されたたくさんのアミノ酸中から、 「これは元々コラーゲンだった」と認識させるためには、コラーゲンにしかないアミノ酸の配列を持ったペプチドである必要があります。 体内のコラーゲンが分解されたものと同じペプチドができれば、 口から取り入れたコラーゲンでも線維芽細胞が「コラーゲンの分解物」と認識してくれます。 食べたコラーゲンの分解物を体内のコラーゲンの分解物と勘違いしてくれるんですね。 コラーゲンがたくさん分解されているからもっとコラーゲンを作らなくてはと頑張る・・・ おそらくこれがコラーゲンの効果の肝なのでしょうが、この辺の詳細なメカニズムは、 今後、専門家の研究で解明されることを期待しましょう。
線維芽細胞を集めるペプチドがコラーゲンを作る信号も出しているのか、 その役目は別のペプチドが担っているのかは不明ですが、いずれにせよ、 食べたコラーゲンが消化される過程でできる特定のペプチドに大きな役目がありそうです。 線維芽細胞に働きかけるペプチドが少量しかできなければ、大きな効果は期待できません。 高分子コラーゲンは、絡まった三本のコラーゲン分子がほどけてそのまま溶け出したもの。 低分子コラーゲンは、高分子コラーゲンを人工的に細かく切断したもの。 低分子コラーゲンは特定のペプチドが残る可能性が低いのです。 はじめから小さなアミノ酸のつながりにしてしまっているので、 消化されたときにはほとんどが単体のアミノ酸になってしまうと考えられます。 また、特定のペプチドに必要な特定の配列部分がすでに切れてしまっていることもあるでしょう。 特定のペプチドが残る確率は高分子コラーゲンのほうが高いと考えるのが合理的です。