脳梗塞
動脈硬化などが原因で、脳の血管が詰まる病気
『脳梗塞』とは、脳の血管が詰まる病気で、命に関わるだけでなく、病後に重い後遺症を残すこともあります。
脳の表面には頸部から延びる太い血管が張り巡らされています。
さらに、太い血管から分かれた細い血管が、脳の奥へ縦横に伸びています。
このように脳全体が血管が覆われることによって、脳の隅々まで血液が供給されます。
脳の血管が詰まると、そこから先には血液が流れていかなくなるため、脳が壊死してしまいます。
その結果、壊死した部位が司る機能が失われて、「手足の麻痺」や「言語の障害」といった症状が起こってきます。
脳の血管を詰まらせる代表的な原因が「動脈硬化」です。
動脈硬化が進行すると、血管の壁に「コレステロール」などの成分がたまり、
「プラーク」という膨らみができます。
そのプラークが血管の内部を塞いで血流を妨げたり、プラークの表面が破れて血液がかさぶたのように固まってできた「血栓」が、血管を詰まらせます。
血栓が脳の奥の細い血管を詰まらせる場合もあります。それによって小さな脳梗塞が生じ、比較的軽い症状が起こることもあります。
動脈硬化以外にも、「心房細動」という
不整脈の一種によって心臓の中に血栓ができ、それが脳梗塞の原因になる場合があります。
脳梗塞は早期治療が重要です。脳梗塞が疑われる症状が現れた場合は、直ちに救急車を呼んで、専門の医療機関に搬送してもらいましょう。
■脳卒中の中で最も発症率が髙い
脳卒中には3つのタイプがあり、脳梗塞はその中の一つです。脳梗塞以外には、次の病気があります。
- ▼脳出血
- 脳の奥の細い血管が破れて出血を起こします。
- ▼くも膜下出血
- 脳の太い血管が枝分かれする部分にできた「脳動脈瘤」という血管の瘤が破裂して、脳と頭蓋骨の間に出血します。
日本人の5人に1人が、脳卒中を発症するといわれています。 世界では、6人に1人とされていますから、日本人は脳卒中を起こしやすいといえます。 また、脳卒中は、寝たきりの原因の第1位を占めています。 中でも脳梗塞の発症は、脳卒中全体の約75%と最も多くを占め、その比率は年々増加しています。
■脳梗塞の症状
麻痺や顔面の歪み、言語の障害などが突然現れる
脳梗塞が起こると、体の左右どちらか片側に突然症状が現れます。 特に多いのが、「体の片側の腕や脚が麻痺する」「顔面が歪む」「ろれつが回らないなどの言語の障害」の3つです。 これらの症状は脳梗塞の重要なサインですから、少しでも異変を感じた場合は、次の要領で素早くチェックします。
- ▼体の片側の麻痺の場合
- 症状は片方の腕や脚に現れます。腕の場合は手のひらを上に向けて両腕を前に伸ばすと、麻痺のある側が下がってきます。 脚の場合は片脚ずつで立ってみます。麻痺のある側ではふらついてうまく立てません。
- ▼顔の歪みがある場合
- 症状が強い場合は、歪みがある側の口角が垂れ下がるため外見で判断できます。 わかりにくい場合は、にっこり笑ったり、「いー」と発音したときに、左右の口角のどちらかが垂れ下がっていたり、 動きが悪ければ顔に歪みがあると判断します。
- ▼言語に障害がある場合
- 「らりるれろ」と発音したり、「バタカ、バタカ・・・・・」と反復して言ってみます。 障害があると、言いにくかったり、もつれたりします。 また「言いたいことを言葉にできない」「発話はできても相手の言葉が理解できず、話のつじつまがあわない」といった 「失語症」が現れることもあります。 その他、「視野の異常」「ふらつき」もよく見られます。 視野の異常は、両眼で見ても左右どちらかの目で見ても、同じ側の視野の半分が欠けます。 目の病気ではなく、脳梗塞によって起こる症状です。ふらつきの場合は、手足の麻痺がないのに立てない、歩けないなどの特徴があります。
●次の症状は現れないことも多い
「頭痛」も多いように思われていますが、脳梗塞で頭痛が起こることはあまりありません。 今まで経験したことがないような激しい頭痛が現れた場合は、むしろ、くも膜下出血が疑われます。 また、重篤な脳梗塞では、意識が低下したり意識を失うこともありますが、必ず現れるとは限らないため、意識があっても油断できません。
■症状に気付いたら
たとえ症状が軽くても、迷わずに救急車を呼ぶ
脳卒中の急性期治療は時間との闘いと言われています。 「神経内科」や「脳神経外科」など、脳卒中の専門医がいる専門の医療機関に、早く入院して治療を受けるほど治療効果が期待できます。 脳梗塞が疑われる症状が一つでもあれば、直ちに救急車を呼んで、専門の医療機関に搬送してもらうことが最も重要です。 かかりつけ医を受診する人もいますが、結局は専門の医療機関に送られるので、それだけ時間を浪費してしまいます。 自家用車を利用する場合は、交通渋滞に巻き込まれて到着が遅れる、病状が急変した場合に対応できない、などのリスクを伴います。 また、最初は症状が軽くても、徐々に重くなる場合がありますから、遠慮せずに救急車を呼びましょう。 救急車の到着を待つ間に、患者さんの周りの人ができることもあります。
●症状が治まってもすぐに診断を受ける
症状が数分から24時間以内に治まることもありますが、軽視するのは禁物です。 その直後に、本格的な脳梗塞を発症することが非常に多いためです。 短時間で症状が治まった場合でも、救急車を呼んで早く専門の医療機関に搬送してもらい、適切な診断と治療を受けてください。
●その他
- ▼脳梗塞のチェック方法「act-FAST」
- 家族など身の回りの人に「脳梗塞では?」と思われる症状が現れた場合は、「act-FAST」が判断の目安となります。 アメリカ脳卒中協会が提唱している合言葉で、受診という行動(act)を取るかどうかの目安となる、 「Face(顔)」「Arm(腕)」「Speech(話し方)」の症状、そして「Time(時間)」の頭文字を取ったものです。 Face、Arm、Speechの3項目のうち1項目にでも該当すれば、脳梗塞の疑いがあるので、一刻も早く救急車を呼びましょう。