【質問】前立腺の手術後、尿漏れが続いています

「前立腺肥大」と診断され、 定期的にPSA検査 を受けてきましたが、尿閉塞になったので前立腺を摘出する手術を受けました。手術から4ヵ月ほど経ち、検査値は下がりましたが、 まだ尿漏れがあります。 内服薬(ベタニス)と骨盤底筋体操を続けていますが、尿漏れは今後も続くのでしょうか。
●73歳・男性


【答】

尿漏れ(尿失禁)には、 「腹圧性尿失禁」「切迫性尿失禁」の2つのタイプがあります。 腹圧性尿失禁は、立ち上がったとき、軽い運動をしたとき、咳やくしゃみをしたときなど、腹圧がかかるときに起こります。 一方、切迫性尿失禁は過活動膀胱に伴うもので、 急に尿がしたくなり、トイレまで間に合わずに漏れるものです。 ご質問者の場合は、過活動膀胱の治療薬(ベタニス)の効果がないようなので、腹圧性尿失禁の可能性が考えられます。 前立腺を摘出する手術では、前立腺のすぐ下にある尿道括約筋が損傷を受けるため尿漏れが生じます。 軽い尿漏れは、手術後しばらくは見られるものですが、1~2月で改善することがほとんどです。 しかし、尿漏れが半年以上持続する場合や、パッドを1日数回交換する必要がある場合などは、その後も尿漏れが続くことが少なくありません。 残念ながら、腹圧性尿失禁に有効な薬はありません。骨盤底筋体操がある程度有効ですが、3ヵ月以上行っても効果がない場合は、 「人工的尿道括約筋埋め込み手術」が検討されます。 この手術では、まず会陰(陰嚢と肛門の間)を3cmほど切開し、シリコン製の襟巻状のカフを尿道に巻き付けます。 このカフが尿道括約筋の代わりになります。また、下腹部を3cmほど切開し、カフを膨らませるための水を入れた、うずらの卵大のバルーンを埋め込みます。 カフとバルーンは皮下に通したチューブで接続します。そして、カフを膨らませたり緩めたりするスイッチ(ポンプ)をチューブにつなぎ、陰嚢内に埋め込みます。 ポンプを押すと尿道を締めているカフが緩んで尿が出るという仕組みです。手術は1時間ほどで、入院期間は数日です。 この手術は尿失禁の完治に有効とされています。起こりうる合併症には感染症や尿道損傷などがありますが、その頻度は稀です。 前立腺の手術後、半年以上、腹圧性尿失禁が続き、日常生活に支障を来している場合は、この手術を勧めします。担当医とよくご相談ください。

(この答えは、2020年2月現在のものです。医療は日々進歩しているため、後日変わることもあるのでご了承ください。)