心身症の治療
『心身症の治療』は、内科的治療、薬物療法、心理療法など数多くあります。
心身症で行われる治療は、当然、肉体面だけでなく精神面でも治療も同時に行うことが必要なので、
一般的には複数の治療法が組み合わされ、心理的な治療と身体症状に対する治療が並行して行われます。
身体症状には食事療法や薬物療法が行われます。
心理療法には、面接による一般心理療法、認知療法、カウンセリング、
催眠療法、自律訓練法、行動療法、バイオフィードバック療法、
簡便型精神分析療法、交流分析、ゲシュタルト療法、生体エネルギー療法、絶食療法、森田療法、などがあります。
治療法の一つである薬物療法は、身体的な症状と併せて起こる不安や抑うつなどの精神的症状を取り除き、
症状の悪循環を断ち切ることなどを目指します。特に、患者がストレスの多い緊張に満ちた状況にいる場合、
薬物療法は心理的身体的な症状の緩和に大きく寄与します。
■心身症の治療
心身症の治療には次のようなものがあります。
- ▼内科的治療
- 体に起こっている病気や症状そのものの治療が行われます。 例えば、過敏性腸症候群で下痢がひどい場合は、下痢止めの薬を使ったり、 糖尿病の場合には、食事を改善したり、薬で血糖値を下げたりします。
- ▼薬物療法
- 「不安」や「気分の落ち込み」などが認められる場合など、抗不安薬や抗うつ薬が使われることがあります。
- ▼ストレスの軽減
- 心身症では、できるだけリラックスすることが重要で、筋弛緩法、自律訓練法 などのリラックス法の指導が行われることがあります。 筋弛緩法は、体を緊張させた後、力を抜いてリラックスする方法です。 自律訓練法は、心の中で”両手両足が思い”などと唱えながら、リラックスした状態を意識してつくっていく方法です。 その他、心身の緊張をほぐすためには、適度な運動、ヨガ、音楽療法なども行われています。
- ▼心理療法
- 認知療法、カウンセリング、催眠療法、自律訓練法、行動療法、バイオフィードバック療法、 簡便型精神分析療法、交流分析、ゲシュタルト療法、生体エネルギー療法、絶食療法、森田療法、などの心理療法があります。
●心身症の心理療法「認知療法」
『認知療法』は、「うつ病」などの治療に用いられる心理療法の一つです。 海外の調査では、認知療法単独で、うつ病患者の60~70%に何らかの効果が見られたというデータがあります。 「認知」とは、ものの考え方や捉え方のことです。 認知にゆがみがあると、何事も否定的・悲観的に捉えて、そこから生まれるマイナス思考が認知の歪みを大きくして、 さらに否定的・悲観的傾向を増すという悪循環に陥ります。 「認知療法」とは、この流れを断ち切るために 「自分の考え方の癖を知り、偏った考え方を修正して、解決策を見つける」というものです。 「認知療法」には、「コラム法」「セルフモニタリング法」「イメージトレーニング法」 「ロールプレイ法」「暴露療法」など、さまざまな方法があります。
- ▼コラム法
- 欄をつくり、ストレスを感じたときの出来事やそのときの感情、最初に浮かんだ考えとその根拠、 合理的な考え方とそのときの感情などを書き出す。
- ▼セルフモニタリング法
- 自分の行動、認知、気分などを自己観察し、記録、評価することによって、 自分の状態を客観的な事実として理解しようとする。
- ▼イメージトレーニング法
- 理想的な自分をイメージし、その考え方や行動のイメージを繰り返し思い描き、実践を目指す。
- ▼ロールプレイ法
- 他者を演じることによって、自分の心の動きや行動を外から客観的に観察し、別の観点から物事を捉えられるようにする。
- ▼暴露療法
- 否定的な感情を起こしやすい刺激に、あえて自分をさらし、その克服を図る。
◆認知療法「コラム法」
「コラム法」は、認知療法の一つです。次のような欄(コラム)をノートに作っておき、 ストレスを感じたときに書き込みます。自分の考え方の癖を知り、現実的な考え方を身につけるためのものです。
- ▼日時・出来事
- ▼感情とその強さ
- そのときに感じた「無能感」「焦り」「落ち込み」「不安」「怒り」「悲しみ」 などの感情の強さを100点中何点と点数をつけます。
- ▼自動思考
- そのときにまず浮かんだ考えやイメージ。
- ▼根拠
- そのように(自動思考)考えた根拠。
- ▼反論
- 別の考え方はないか、自分で自分に反論してみます。
- ▼合理的思考
- 反論した結果浮かんだ別の考え。
- ▼結果とその強さ
合理的な考え方をしたときの、新たな感情とその強さ。
なかでも特に重要なのは、物事に対して自然に浮かんでくる「自動思考」です。 何かトラブルなどがあったときに、根拠がないのにもかかわらず「自分のせいだ」「~すべきだ」 と自分を問い詰めることがありますが、このような考え方の癖は、否定的な自動思考だといえます。 否定的な自動思考は、”自分はだめな人間だ””トラブルは解決できるはずがない” ”いつもこうだ””失敗するに違いない”などという極端な物の受け止め方につながり、 マイナス思考はさらに強くなります。また、何事にも否定的でいると、実際に失敗しやすくなることも考えられます。 このような自分の考え方の癖を知り、別の考え方があることがわかれば、気分や感情など情緒が安定して、 行動はより現実的なものに修正されます。このような修正を体験することにより、考え方の癖を変えることを目指します。
◆心身症の心理療法「バイオフィードバック療法」
外界からの刺激に対する反応を患者自身が自覚するための方法の1つです。 例えば、心拍数、血圧、筋肉の収縮の程度など、さまざまな体の反応を測定し、 そのデータを患者にわかりやすい形で示します。患者はどんなときにどんなデータが測定されるかを知ることで、 体の状態をコントロールする方法の習得を目的とします。
◆心身症の心理療法「交流分析」
心の状態と行動パターンを分析することで、自分の性格の”ひずみ”を知り、 円満な人間関係を築けるようにする方法の一つです。 最初に、「親」「大人」「子供」など、心の要因について、質問形式のテスト(エコグラム)を行います。
◆心身症の心理療法「薬物療法」
心身症の薬物療法では、抗不安薬が使われます。 抗不安薬とは、精神的な不安症状や不安に伴う身体症状を改善する薬です。 「不安障害」(いわゆる神経症)をはじめ、不安のかかわりが深い「心身症」、 不安を伴うからだの病気などの治療で広く使われています。
【関連項目】: 『抗不安薬①抗不安薬とは?』 / 『抗不安薬②治療に用いる薬』